history日誌

へっぽこ歴史好き男子が、日本史、世界史を中心にいろいろ語ります。コミュ障かつメンタル強くないので、お手柔らかにお願いいたします。一応歴史検定二級持ってます(日本史)

タグ:菜根譚

1 耳に痛い言葉も薬になる

耳中、常に耳に逆らうの言を聞き、心中、常に心に もと
の事有らば、わずかに
是れ徳に進み行いを修るの砥石しせきなるのみ


これは『菜根譚』の一節で、いろいろな人が引用します。先輩や上司などから厳しい言葉、耳に痛い言葉を投げかけられても、それは自分の弱点なり欠点を指摘してくれているのだから、それを直すことで自分の向上につながるよって意味です。

『菜根譚』の著者の洪自誠は優秀な官僚だったといわれておりますが、おそらく駆け出しのころは結構、失敗ばかりで先輩や上司から叱られていたのではないかと推測されます。怒られて気分がいい人はいません、誰だって褒めてもらいたい。洪自誠だって、はじめは上司や先輩のことを恨んだかもしれない。でも、彼は確かに自分にも非があるなって、自分の悪いところも直して、それでエリートに上り詰めたんじゃないかって。

逆にそれは上司というか上にたつ人にも言えること。上に立てばたつほど、叱ってくれたり言ってくれる人がいなくなり、下手すりゃおべっかばかりいう人ばかりになる。そんな中でも諫言をしてくれる部下は貴重なんですね。

ちなみに洪自誠が活躍したといわれたころの皇帝は明の万歴帝でした。彼は最初はよい政治をしていたのですが、だんだん政治への情熱も薄れ、次第に自分のイエスマンばかりで固めるようになったのです。そして、どんどん明の国も滅亡に近づいていくのです。そんな様をみた、洪自誠も厳しくても自分のためを思っていってくれる人はありがたいんだなって思ったのでしょう。ただ、この『菜根譚』のこの言葉を錦の旗にして、いじめに近いような指導あるいは、主君をバカにしたような諫言は考えもの。

2 注意するにも言い方がある。
 

人の悪を攻むるときは、はなはだは厳なることく、其の受くるに堪えんことを思うを要す。


他人の悪事や欠点を見て改めさせることはよいことだが、それには言い方があり、あまりに辛らつな言葉でなじったり、大きな声で怒鳴ってはいけないよって意味です。

まして暴力なんてもってのほか。漫才師の横山やすしは弟子やスタッフに厳しかったことで有名で、怒鳴る殴るなんて当たり前で、服のたたみ方が悪いという理由だけでハンガーで滅多打ちにし、ハンガーが頭に刺さってしまったと。それで横山やすしは病院に連れていくどころか「そのままにしておれ!」と命じたといいます。もはやパワハラを通り過ぎて犯罪に近いですね。

欠点を改めさせるにしても、相手が欠点を直そうという気持ちを起こさせなくては意味がないと思うんですね。欠点を直すどころか、かえって委縮して仕事ができなくなったり、怖い上司を恐れて報告をしなくなるリスクも高まります。下手すりゃ部下が精神の病気になってしまうことも。

実際、先の大戦で源田実とか牟田口廉也は、部下が自分たちにとって都合の悪い報告をすると、ともかく怒鳴ったといいます。とくに牟田口はムチで部下をひっぱだいたというから、相当たちが悪い。だから、部下たちはそうした上官にはよい報告やウソの報告しかしなかったといいます。そうしたことの積み重ねで、どんどん日本軍の戦況は悪化しました。

また逆に部下が上司に諫言するにしても言い方があります。あんまり辛らつな言い方をすれば上司だって人間、怒ってしまい、それこそクビになるかもしれない。洪自誠も、皇帝に諫言をして、皇帝の怒りを買い、左遷させられたり、下手すりゃ死刑になった人を見たのかもしれない。もしかしたら、洪自誠自身も上司に諫言したが言い方が悪かったので官僚をやめる羽目になった可能性もあります。

3  反省は己を養う良薬 
 
己をかえりみる者は、事に触れて皆薬となり、人をとがむる者は、念を動かせば即ち是れ戈矛かほうなり。一を以て衆善の道を開き、一を以ては諸悪の源をふかくす。相去ること壤矣しょうじょうなり。


 意味は自分の言行を常に反省する人は、ふれるものがすべて良薬になると。反省といっても心から反省することで、ただの反省だったらサルでもできます。一方、人の過失などを厳しくとがめる人は、人を傷つけるだけでなく自分をも傷つけてしまう。前者は、自分のことを反省できる人だから幸せになれるし、他人までも幸せにする。一方の後者は、自分だけでなく他人までも傷つけ、次第に悪事を犯してしまうと。両者の差は月とすっぽんだという意味です


聞いた話なのですが、定年退職後に嘱託になったおじさんがいて、ミスをしてしまい嘱託のおじさんより年下の上司から注意をされたといいます。その嘱託のおじさんは「パワハラだ!」って逆切れをしたといいます。年下の上司は「あなたが管理職だったころ、部下に優しくしたのですか」と聞いたら、嘱託のおじさんは、「課長だったころ、部下を泣くまで怒鳴りつけてやった」って自慢げに語ったといいます。それを聞いた年下の上司は開いた口がふさがらなかったといいます。年下の上司の言い方も悪かったのかもしれないけれど、嘱託のおじさんもおじさんだよなって、その話を聞いて思いました。反省がないんだもん。


まとめると、自分のことを反省しつつ、他人の欠点を必要以上になじってはいけないよってことでしょうね。

菜根譚 (岩波文庫)
今井 宇三郎
岩波書店
2018-11-15

1 名だたる有名人が愛読した本
 みなさん、『菜根譚さいこんたん』ってご存じでしょうか。「さいこんたん?、あの有名な外人タレントさんでしょ?」。それは、サンコンさんw。「料理のレシピ本かなにか?」。本のタイトルだけみるとそう見えるかもしれないですね。じつは、この本は16世紀の明の時代に書かれた本で、処世術しょせいじゅつが書かれた本なのです。それほど知名度の高いではなく、それこそ知る人ぞ知る本なのですが、この本が日本に広まったのは実は江戸時代で、それ以降、この本を愛読した人は結構いたのです。


  • 川上哲治(プロ野球選手・監督)

  • 野村克也(プロ野球選手・監督)

  • 田中角栄(政治家)

  • 五島慶太(実業家)

  • 松下幸之助(実業家)


  • 吉川英治(作家)



などなど。そうそうたるメンバーがこの本をよんでいますね。これだけの人が、この本を座右の書として、素晴らしい業績を残されたのですね。この本を読んで、この本に書かれていることを少しでも実践すれば、田中角栄や川上哲治とまではいかないまでも、成功を収めることができるかもしれない。これは読まない手はないですね。実際、『菜根譚』は数ある中国処世訓の最高傑作ともいわれております。

2 『菜根譚』とは
『菜根譚』がどんな本かというと

  • 16世紀末、中国の明の末期に書かれた本

  • 前後2集に分かれ、前集222条、後集135条、全部で357条。現在でいえば「今日の格言カレンダー」のように、格言が書かれた短い漢詩が357条もある。

  • 前集は世に出るための処世術を、後集では社会の第一線を退いた後の楽しみ方が書かれている

  • 作者は洪自誠こうじせい(生没年、経歴不詳。ただ優秀な官僚だったといわれている)

  • 日本に伝わったのは江戸時代。評価が高まったのは初版から300年後。


  • 江戸〜昭和の時代に愛読された


といったところでしょうか。

3 洪自誠ってどんな人?

 『菜根譚』を書いた洪自誠こうじせいがどんな人なのか、あんまり良くわかってないのですが、明代末期の人で、優秀な官僚だったが、派閥抗争に巻き込まれ、人間社会に嫌気が差し、隠遁生活を送ったんじゃないか?と言われております。ただ、洪自誠には友人がいて、その友人がいうにはもっぱら儒学の人であったが、仏教思想や道教にも通じている人だったと。確かに『菜根譚』を読んでいると仏教思想とも儒教思想ともとれるような発言が出てくるのですね。それと『菜根譚』読んでいると、「あ、この人は結構人生でいろいろと、ほろ苦い経験をたくさん積んでいるな、それと人間関係にも結構悩まされたな」って伝わってくるんですよ。

「文以拙進 道以拙成 一拙字有無限意味」(後集93条より)
「文は拙を以て進み、道は拙を以て成る。一の拙の字、無銀の意味あり」



この詩だけでなく『菜根譚』には「せつ拙」という言葉がよく出てきます。
「拙」の意味は「巧」って言葉の反対で、つたないとか、へたっぴとか不器用とか、ともかくマイナスのイメージです。しかし不器用な人でも一生懸命、誠実にやれば、うまいヒトより上達したり、成功したりするってことです。実際、仕事でも不器用だったり、とろい人は上司からよく怒られます。要領よくこなせる人は上司からよく褒められます。しかし容量の良い人は、上司の機嫌をうまくおだてたり、ミスをごまかしたりして、その場をしのぐことばかりの可能性がある。

一方、いつも怒られる人は、ある意味自分でも気づかない弱点とか、そういったものを気づける。怒られるのは嫌だけれど、自分の欠点とか弱点を直していけば、要領よく、その場をうまくごまかしている人より大成する可能性があるってことでしょうね。もしかしたら、洪自誠もどちらかというと、不器用な人で結構苦労した人なんじゃないかって思ってしまいます。


※ 参考資料
『100分de名著』(NHK)の」番組
『座右版 菜根譚』

座右版 菜根譚
久須本 文雄
講談社
1994-10-07

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