1 グレムリンのモデルは日本人?
この間、Amazonのビデオで久々に「グレムリン」見ましたが、懐かしいですね。子供の頃に見た時は、怖いなって思ったけれど、大人になってみてみると、以前ほど怖いなって思わなくなった。「チャイルドプレイ」だとか「シャイニング」とか、「グレムリン」よりもっと怖いホラー映画やサスペンス映画を見慣れた後となると「グレムリン」が取り立てて怖いとは思わなくなったですね。むしろ、ちょっと怖いところもあるけれどコメディー色や風刺も込められた映画だなって。


さて、この映画に出てくるグレムリンという化け物のモデルが日本だと言われておりますが、僕は半分は当たっているかもしれないが、半分は違うと思います。

まず本題に入る前に、「グレムリン」のあらすじを。主人公ビリーの父親が、息子のビリーのためにチャイナタウンにある骨董品屋でモグアイという謎の小動物を買おうとします。この小動物は、けむくじゃらで耳が異様にデカく、猫のような猿のようなそんな生き物です。しかし、骨董屋の主人は売り物ではないといって拒否します。しかし、骨董屋は金に困っており、主人の孫がこっそり、ビリーの父にモグアイを売ってしまいます。主人には内緒で。

父からモグアイを渡されて、ビリーは大喜び。ビリーはそのモグアイに「ギズモ」って名前をつけます。意味は、新製品。生き物に製品って名前をつけるのも変な感じですが。そのモグアイを飼うのは大変難しく、三つの決まりを守らなくてはなりません。



  1. 水をかけてはダメ。数が増えるから。

  2. 光を当ててはダメ。苦手だから。特に日光を当てると死んでしまう。

  3. 深夜に食べ物を与えてはダメ。かわいらしいモグワイは、グロテスクなグレムリンになって狂暴化するから。これが一番守んなきゃいけない決まり




結局、ビリーたちは決まりを破り、モグアイの数も増やしてしまい、挙句に狂暴化させてしまい、人間に危害を与えるようになるのです。それはヒッチコックの「鳥」のように、人間を襲う生物がどんどん増えてくる怖さ。

2 双子の赤字に悩まされたアメリカと映画「グレムリン」
 で、映画にフッターマンというおじさんが出てきて、たびたび外国製の電化製品やら車を批判し、車は国産つまりアメリカ製に限ると言っているのですね。フッターマンは、かつては第二世界大戦の英雄だったが、現在は失業中という設定。この映画が上映されたのは1984年。当時のアメリカは双子の赤字に悩んでいたのです。双子の赤字とは、



  • 貿易赤字

  • 財政赤字


ベトナム戦争で莫大なお金を使った挙句に、1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻。米ソ間の軍事的緊張が高まっている状況。軍備にかけるお金がばんばん膨らみ財政的に苦しくなる一方。だから、当時のアメリカは今の日本のような雰囲気で、国民も自信を失っていたのですね。そんな状況だから、ギズモもアメリカの国旗を好み、おまわりさんから「アメリカびいきなんだな」って言われる場面が出てくるのです。国民が自信を失っているいまこそ愛国心を持とうって動きが当時のアメリカにあったのでしょうね。かたや、日本は莫大な貿易黒字だったのです、それは二つの理由からです。

  • 安くて省エネで品質の良い電化製品や車を作ることができた

  • 専守防衛で防衛費よりも経済発展にお金をかけることができた



日本は70年代の石油危機を省エネ技術や太陽光発電などの技術革新で乗り越えたのです。この結果、燃費に優れた日本製の車や、信頼性の高い日本製の電気製品が世界を圧巻したのですね。また、日本は防衛費に金をかけることもなかったし、ベトナム戦争の時、アメリカは日本に派兵要請をしたものの、憲法9条を盾にそれを拒むことができた。それで、1981年の日本のGN Pは世界の10%を占めるほど。しかし、こうした経済の発展はアメリカの強い反発を生むのですね。日米の貿易摩擦です。日本の輸出攻勢はアメリカの産業に大打撃を与えるのです。

アメリカの自動車業界では30万人もの労働者が解雇され、日本車の非売運動まで発展します。「グレムリン」のフッターマンもそうした状況で工場を解雇され、外国産とくに日本産の電化製品には嫌悪感を抱いていたのですね。


3 プラザ合意
そして、アメリカは双子の赤字状況を脱却すべく、1985年にプラザ合意を行いました。これは日本や西ドイツ、イギリスいった国々の首脳をアメリカのプラザホテルに集め、アメリカのドルの価格の是正を求めたものですが、槍玉に上がったのが日本との間の貿易赤字。

結局、日本の車や家電商品が安いから売れるわけで、ドルの価格が下がり、いわゆる円高ドル安状況になれば、日本の車や家電商品が高くなる、それで日本製のものが売れなくなるのです。円高ドル安って言われてもわかりにくいですが、これはアメリカ人の立場から見て、円の価格が高く、ドルの価格が安くなったという状況。円、つまり日本のお金の値打ちが高くなれば、日本製そのものの値段も上がってしまうってことですね。

そうなると、困るのは日本。車や電気製品がアメリカで売れなくなったのです。円高になると、輸出に頼っている日本は困ってしまうのです。それで好景気に沸いた日本も円高不況になってしまい、日本の工場が海外に出て行ってしまったりといろいろ大変なことになって、それからバブル経済に突入するのですが、それ以降の話はまた別の機会に。

グレムリンが上映された1984年はプラザ合意の一年前ですね。グレムリンの映画に出てくる、グレムリンの正体は日本じゃないかとも言われておりますが、確かに当時のアメリカ人にとって、当時の日本人は小憎たらしい悪魔のような存在かもしれない。しかも80年代といえば、先の戦争から40年しか経っておらず、日米両国、お互いに戦争の記憶も残っている状況。両国の指導者たちも戦争を知っている世代。

4 グレムリンは自然の摂理を守れというメッセージ
でも、グレムリンは知日派のスピルバーグも関わっているし、この映画のダンテ監督も日米の対立とか、そうした話を盛り込みつつも、自然への畏怖を忘れ、お金儲けに走る人間への警告をしたかったのかもしれない。映画でも、骨董屋の主人が、「人間は愚かで自然の摂理を踏みにじってまで、幸せを得ようとする」と非難しています。実際、アメリカでも環境問題に関心を持つ人が増えたのですね。温暖化、それからフロンガスによるオゾン層破壊が問題になったのもちょうどこの頃。

また、1990年に「グレムリン2」が上映されます。2の方がコメディ色が強く、マネーゲームに走り過ぎて、人間としての情だとか、自然への畏敬を忘れてしまったことへの批判が1よりも込められておりました。

グレムリン2には遺伝子をいじくって新しい生物を作り出す研究所が出てくるのですね。ちなみに「グレムリン」は小説にもなっているのですが、そこではモグワイは科学が発展した星で科学者が人工的に作り出した生物だという設定なんですね。それで科学者がモグワイを地球に送り込んだって話。ここでも自然の摂理を忘れた人間への批判が込められております。

そして、守銭奴の象徴が、2に出てくるクランプという富豪。クランプはニューヨークの王者と呼ばれる人物で、不動産を中心にアメリカの経済を動かすほどの人物ですが、一方で偏屈で人間性に欠けている面もあった。クランプは土地の買い取りを先の骨董屋に持ち掛けますが、骨董屋はクランプをアホ呼ばわりして、それを拒みます。もっともグレムリン騒動で彼もラストでよい人間になるのですが。

そのクランプのモデルが、トランプ元大統領。トランプは日本では、大統領になるまで、それほど知られた人物ではなかったのですが、アメリカではこの頃からすでに有名人で、評判もあまり良くなかった。「バックトゥザフューチャー」に出てくる悪役のビフもトランプがモデルだと言いますし。横暴でモラルに欠ける人間とみなされた人物がのちにアメリカの大統領になるとは。いろいろ考えさせられます。