戦争に反対する者の意見は抽象的であるが、内閣のほうは数字を挙げて戦争を主張するのだから、遺憾ながら戦争論を抑える力がなかった。


この昭和天皇の発言は、昭和21年に側近に語られたものです。時の内閣、近衛文麿はアメリカとの戦争に反対していたのです。しかし、その近衛の言葉は抽象的で、ただ戦争反対を唱えるばかり。今でいえば左派政党の戦争反対みたいな感じでしょうか。かたや開戦をとなえる軍部や関係者は資源の問題や勝算などを具体的な数字をあげて主張したのです。その数字がでたらめやゴマカシであってもよいのです。ともかく具体的な数字を言われると抽象的な主張をする人間は弱いです。ましてや軍部は声もでかいですからね、時に怒鳴り声をだして脅かしたりしたのでしょうね。もちろん、石橋湛山のように具体的な数字を挙げて戦争を反対する論者もいたのですが、当時の日本では石橋の意見は聞き入れられなかったのです。


元来軍人の一部は戦争癖がある。軍備は平和のためにすると口にしながら、軍備が充実すると、その力を試してみたくなる悪いくせがある。これは隣人愛の欠如、日本武士道の退廃たいはいである。


昭和天皇は国防を非常に大切に考えており、それは戦後になっても変わらなかったのです。ただ、旧軍のやり方には腹に据えかねていたところがあり、軍部それも上層部がいかに武士道がわかっていなかったと嘆いていたのですね。