今日は大江山の酒呑童子について。有名な鬼ですよね。酒呑童子の物語を知らない人はいても、その名前を知っている人は多いはず。

時は平安時代、都で多数の行方不明事件が起こります。それで名高い陰陽師の安倍晴明が占ったところ、大江山に住む鬼の仕業だということがわかりました。その鬼の名前は酒呑童子。大江山は京都府の北西にあります。ここには鬼が古くから住んでいたという伝説があります。鬼退治の命を受けたのは武勇名高い源頼光。頼光は部下を率いて大江山に向かいました。

頼光一行が山を歩くと立派な宮殿を見つけました。その宮殿の中から身長3メートルもある大男が出てきたのです。大男と言いましても、「丸大ハンバーグ」のCMに出てくるおじさん(「大きくなれよ」のセリフで有名)、あw、若い人はわからないかw。「ジャックと豆の木」に出てくるようなおじさんではありません。見た目は子供のように見える大男です。

びっくりしたでしょうね。身長3メートルですからね。その大男は頼光一行をもてなし、酒宴を開いたと言います。そして、酒が入っていつの間にか仲良くなって、いろいろな話をしたのです。そして大男が身の上話をしたのです。

「自分は元々は比叡山に住んでいたが、最澄によって山を追い出されてしまった。仕方がないから、今は大江山に住んでいる」と。比叡山は延暦寺があるところですよね。要するに、大男は最澄や仏教勢力を快く思っていないのですね。

その大男の正体こそ酒呑童子に違いないと思った頼光たちは、鎧で身を構え、大男が寝るのを待っていたのです。そして大男の寝床に忍び込んだら、なんと身の丈15メートル、ツノが5本、目がいっぱいの、恐ろしい化け物、酒呑童子でした。そこへ頼光たちが斬りかかったのです。こうして酒呑童子を退治したのです。でも、冷静に考えるとひどい話ですよね。大男(酒呑童子)は源頼光を襲ったわけでもないし、都における行方不明事件の犯人だったという証拠もない。その根拠というのは、物的証拠ではなく、安倍晴明の占いの結果ですからね。むしろ、酒呑童子はお酒を勧めて源頼光をもてなしたのだから、結構いいやつじゃんって。

酒呑童子の首を持ち帰り、一向は大江山から京に向かったのですが、首が急に重くなったので運ぶことができませんでした。それで、途中のところで首を埋めたのです。その首を埋めたところは首塚大明神となっております。そんな伝説があるのです。また、その首は宇治の平等院の宝蔵に収められているという伝承もあります。

それにしても、このような恐ろしい鬼が実在したのでしょうか?実は平安時代は天皇を中心とした国家体制が確立されておりました。一方で、天皇に反発する人たちや、歯向かう豪族も少なくなかったのです。そうした人たちの存在を朝廷は許さなかったのです。また、宗教界では天台宗が最も権力を持っておりました。朝廷の加護を受けていましたからね。皇室にも逆らい、天台宗に対しても従わない宗教的なバックボーンを持った人たちがいても不思議じゃありません。そういう人たちを酒呑童子と見立て、悪者にしたのでしょう。要するに邪魔者。排除すべきものたち。今まで住んでいたところを追われ、逃げたら、逃げたで反逆者として、また追われ、結局殺されてしまう。なんかひでえ話だね。朝廷の方がよっぽど鬼じゃねえかって思ってしまいます。

DSC_2065

(宇治の平等院)



*この記事は「ダークサイドミステリー」