1 吉原の概要
今日から数回にわたって吉原の遊女ゆうじょさんのお話をしたいと思います。吉原には250軒も妓楼ギロウがあり、約3000人の遊女がいたそうです。江戸幕府公認の遊郭だったのです。旦那さんたちが吉原に落としたお金は一日に千両、現代の価格に直すと一億円、があったと言います。すごいですね。お金持ちじゃないと吉原で遊べませんよね。

その吉原の付近に見返り柳があります。これは、吉原で遊んだ旦那衆が名残惜しくなって、見返り柳があるところから吉原のある方を見返ることから、見返り柳というようになりました。見返り柳から吉原の大門に行く途中の道が、およそ90メートルくらい、くねくねと曲がっております。なぜでしょう?

吉原は東北の大名たちからの侵攻を防ぐための城塞ジョウサイの役目があり、敵が中を見通せないようにするためという説もあれば、外から遊郭が見えないようにするためだと言われております。

大門の近くには四郎兵衛会所という自警団の詰所がありました。ここでは遊女たちが逃げないように監視していたのです。吉原は日本堤という堀に囲まれております。幅3・6メートル、深さ1・8メートル。遊女さんを逃さないためでしょう。お歯黒ドブとも呼ばれておりました。


入口も大門しかなかったので、これでは遊女さんも逃げにくい。もし遊女さんが逃げたら、ひどい折檻セッカンを受けたと言います。遊郭での生活がつらくなって脱走したり、客と駆け落ちしたり、心中するものが多かったため、吉原から外へ出ることは固く禁じられるようになったのです。

大門をくぐると、そこは不夜城、夜のパラダイス。大門からまっすぐ仲之町と呼ばれるメインストリートがあります。花魁道中や、季節ごとのイベントがここで行われました。江戸っ子たちは吉原に行くことを、「仲へ行ってくらぁ」って言っていましたが、その仲というのが仲之町のことだったのです。仲之町には引手茶屋がひしめいていて、遊廓との仲介をする場所です。引手茶屋の話は後ほどお話しします。

2 遊女さんのあの手、この手
 さて、こう言っては悪いけれど、遊女さんはウソをつくのが商売です。好きでもない男の客に対して「愛している」とか心にもないことを言うのは当たり前のことでした。「女郎じょろうの誠まことと卵の四角、あれば晦日みそかに月がでる」といわれたほど。

遊女さんたちは、あの手この手を使って男の客をひきつけました。そういったあの手この手の手段のことを、「手練手管てれんてくだ」といいます。そうした手練手管を用いて、自分たちのいる遊郭ゆうかくに通ってくるように仕向けるのです。そうして男をおだてては、金をむしり取るのです。

遊女さんたちが具体的にどのような手段を用いて男たちを口説いたのかは下のサイトによくまとまっています。

http://matome.naver.jp/odai/2142093408831217701

手紙をつかったり、うまいことを言って口説くだけでなく、入れ墨をいれたり、自分の髪かみやツメ、それから指を切ったりしてまで、「私はあなたのことを愛しているのよ」とアピールしたようです。

もっとも好きでもない男のために自分の指を切る遊女さんなんてそうそういるわけじゃなく、たいていは「しんこ細工」(お米を粉にして、それを水でこね、さらに蒸したもの)でつくられたニセの指を男に差し出していたり、死人の指を差し出したといいます。入れ墨もニセモノが多く、かんたんに落とすことができたといいます。


3 冷やかしの語源
 吉原で遊部と金がかかると申し上げましたが、吉原に訪れたのは金持ちだけではありません。多くは庶民でした。江戸時代は今みたいにゴルフや映画、音楽、ネットなどの娯楽も少なかった時代。吉原で遊ぶことはいわばテーマパークに行くような感覚だったのです。しかし庶民はお金があまりありません。

そこで庶民は直接、妓楼に行きます。その妓楼の見世先の格子越しに遊女さんが並んでいるので、その遊女を品定めするのです。見世先の様子はこんな感じ。格子越しに並んでいる遊女さんはランクは低く、太夫さんはまず並んでおりません。それでも可愛い子がいるということで目の保養になります。だから、遊ばなくても、遊女さんを眺めて帰る男も少なくなかったそうです。

また、江戸時代にはすでに再生紙があって、紙クズ収集屋さんがいて、集めた紙クズから再生紙を作る専門の職人さんもいたのです。紙クズを煮て冷やして再生紙を作るのですが、煮た紙を冷ましたり、水槽に古紙を入れて水を含ませ軟らかくする工程のことを「冷やかし」と言います。

その紙が柔らかくなるのに二、三時間はかかったといいます。それでヒマだからといって、職人は吉原見物をしたそうです。職人は吉原で遊ぶことなく、ただ見物して帰るのです。そこから冷やかしという言葉が生まれたとか。しかし、「冷やかし」は嫌われました。せっかくきたんだったら遊びに来いということでしょう。


3A965DFB-04D5-4AD5-8B68-7A14968865B2

(Wikipediaより)



9F01A42B-2DA0-497E-BE50-8D0B4183C584
3607C25E-5E4B-4726-9209-A289EC01D198

(見返り柳)

18F30D46-F646-470C-9170-1C6DBC849266
F0CCB1EC-4963-488B-8A8F-D58F926578D4
F0CCB1EC-4963-488B-8A8F-D58F926578D4

(大門まで行く道。くねくね曲がっている)

5F015D92-1E78-44B8-A4D8-48A7E7557856

(お歯黒ドブの跡。昔はこの辺りに堀があった。今は堀がなくなって段差だけが残っている)