長々と紅葉の伝説を書きましたが、紅葉伝説はあくまでも伝説。史実ではありません。紅葉が炎をはいたとか、降魔の短剣こうまのたんけんなんて、まるでドラクエの世界ですものw

しかし、元になった話はあると思われます。紅葉の伝説もそうですが、日本のオニ退治の話はだいたい朝廷ちょうていがつかわした武将がオニをやっつけるプロットになっております。

オニのモデルは、タタラの民と呼ばれる人たちだったり(※1)、あるいは山賊さんぞくだったり、朝廷の言うことを聞かない地方豪族ちほうごうぞくだったり。

もしかすると紅葉一派のモデルも朝廷と戦って敗れたり、あるいは都の勢力争いに敗れた貴族か、地元の豪族ごうぞくかもしれないのです。そうした一派の中には山賊さんぞくになって人々を襲うようになるものたちもいるのです。やっていることは悪いけれど、そうでもしないと一族が食っていけないからでしょう。

そうして山賊さんぞくの身となった者達は、オニの面を付けて旅人達をおどかしていた事もよくあったそうです。

話は変わりますが、信州の安曇野あずみの(※2)に八面大王はちめんだいおうというのがいました。八面大王は地方豪族ごうぞくで、朝廷がムチャなことを要求するので立ち上がった英雄だといわれております。ところが、朝廷に逆らったということで悪者にされてしまったのです。

当時の朝廷は東北地方に軍隊を送り、東北の地を支配しようとしていました。そして、信濃しなのの国つまり長野県は都(今の京都)と東北のちょうど中間地点にあります。東北に軍隊を送る際に、この、信濃しなのを平定し、ここを足がかりに東北に攻め込もうと朝廷は思ったのでしょう。

それで朝廷は、信濃しなのの地方豪族に自分たちに協力するように求めたのですが、中には言うことをきかない豪族ごうぞくもいたと思われます。そうした豪族ごうぞくを朝廷は力でねじふせたと。

しかし言うことを聞かないという、それだけの理由で豪族ごうぞくをやっつけたのもバツが悪いので、その地方豪族ごうぞくをオニの一族よばわりして、あたかも自分たちが悪いオニをやっつけた正義の軍隊だと思わせたのでしょう。イラク戦争のときのアメリカみたいなものでしょうか。あの時もイラクが大量破壊兵器を持っているという理由でアメリカは爆撃をしましたが、結局大量破壊兵器は出てこなかった。


紅葉のお墓は今も鬼無里の地に眠っております。紅葉のおはかのある寺には川端康成かわばたやすなりもおとずれたそうですね。



(松巌寺 の階段)


(紅葉が眠っているお寺 松巌寺 )



(紅葉のお墓)


(紅葉の家臣のお墓)

※1 鉄をつくるなどをして生活をしている人々
※2  今の長野県の穂高ほだかあたり


※ オマケ 

紅葉の伝説は、能の題材にも使われましたし、紅葉伝説がモチーフになった演劇もあります。


また、紅葉の悲劇をしのんで、歌もつくられました。西島三重子さんという人が歌った「鬼無里の道」です。悲しげな歌です。西島三重子さんのヒット曲は「池上線」ですが、あいにく「鬼無里の道」はそれほど知名度の高い曲ではないようです。でも、とてもいい歌だと思いました。

西島三重子 スーパーベスト・コレクション WQCQ-160
西島三重子
ワーナーミュージック・ジャパン
2008-09-26







※ 参考文献


鬼女紅葉伝説のことが書いてあったパンフレット(鬼無里ふるさと資料館でもらったもの)

鬼 (Truth In Fantasy)
鬼 (Truth In Fantasy)